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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇173 恒例の花見&総会 高い志に共感集まる FRP会員48人に

 一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会(FRP=真鍋茂彦代表理事)の社員総会が4月1日、東京・市谷のアルカディアで開かれた。会員が48人に達し、役員、顧問、推薦人などを加えるとその規模は60人程になる。報告された24年度の主な活動は第3回PPP(プロフェッショナル・プレーヤー・フィロソフィー)講座開催、不動産流通推進センターへの第3回提言、第2回未来講座実施、PPP講座リモート版実施などだが、徐々に各種委員会も設置され始めている。

 設立されても数年で活動停止状態に追い込まれる団体も多い中、順調に拡大を続けるFRPの魅力はどこにあるのだろうか。代表理事の人柄という声もあるが、より本質的な要因は団体が掲げるその理念の高さにある。その象徴が「コンプライアンスへの誓い」と言えるだろう。

 FRPは不動産流通推進センター認定の公認不動産コンサルティングマスターと宅建マイスター資格取得者で構成される団体である。その志はひとえに両資格者が依頼者利益のために最善を尽くし、依頼者の信頼を裏切らない行動をすることである。

 推進センターへの3回目の提言では、その旨を両資格者の行動規範として明記することを進言している。高度な資格を得たことにおごらず、業界の信頼向上のために自らの行動を厳しく律しようと努める人たちの姿が業界の志ある人たちの共感を呼んでいるのだと思う。

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 社員総会が開かれたのはJR市ヶ谷駅に近いアルカディア2階にあるレストラン「フォッセ」。手作りの味にこだわったフランス料理が楽しめる店だが、実はそれ以上に大きな窓から外濠土手の桜並木を望むことができることで有名だ。予約は1年前からしないと難しいと言われるぐらい室内花見スポットの名所でもある。

 FRPは毎年ここで総会を開催している。今年はあいにく肌寒い雨に見舞われたが、それでも35人が参加した。GOGENの和田浩明社長やTERASSの江口亮介社長など業界の変革者と言われる若い経営者も参加した。両氏はそれぞれ「未来講座」の第1回と第2回の講師で以来、和田氏は理事に、江口氏もPPP精神に賛同している。

 筆者は思う。不動産業界の変革にDXもAIも不要である。求められているのはクライアント(依頼者)に対する忠誠心(コンプライアンス)のみである。そこからスタートしなければ何も始まらない。なぜなら、そこから先こそがプロとしての奥深い世界になるからである。何をもって忠誠心を果たしたと言えるのか、どういう結果が依頼者の利益を守ったことの証明になるのか。コンプライアンス違反がなかったかどうかの境目は存在するのか。

 コンプライアンスの哲学的研究はPPP講座などFRPの活動で始まったばかりである。しかし、そのために残されている時間は多くない。少子高齢化の急速な進行によって日本が経済だけでなく社会保障、医療・介護などの崩壊問題に加え、企業レベルでも労働力不足や人件費上昇、技術・ノウハウの断絶などが深刻化する2030年頃までにはその答えを導き出さなければならない。

 不動産業の本質と使命はいつの時代も国民の生活に密着し、命と暮らしを支える人間産業だからである。だから、個々の不動産業者が志を高く持つだけではだめで、業界全体が信頼産業という高い格式(社会的ステータス)を持たなければならない。

 そして、国民に一目置かれる格式の高い業界団体が生まれれば会員企業もそれにふさわしい品格を持つようになり、新たに参加する業者へのプレッシャーにもなる。不動産業界にそうした好循環が生まれることこそFRPの目標である。

 おそらく来年の総会もレストラン「フォッセ」で開かれるだろう。外堀土手の桜は多くが老木のため新芽の数は既に限界だが、FRPの会員はまだまだ増えるだろう。