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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇196 BESS 賃貸に挑む ログでテラスハウス 大らかな暮らし実現

 ログハウスを展開するBESSは10月1日、ブランド・スローガンの〝「住む」より「楽しむ」〟を賃貸でも実現するため、テラスハウス型賃貸住宅の販売を始めた。BESSのログ商品の中から、ログハウスのDNAを持ちながらもそのデザインが街中にも馴染むことで人気となっている「ワンダーデバイス」を採用する。賃貸でもログハウスの大らかな暮らしを楽しんでもらおうという試みだが、経営効率を重視するオーナーの意識をどこまで変革できるのかが焦点となる。

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 これまでの賃貸住宅が経営効率や相続対策の観点から建てられてきたことは確かだが、近年は、夜でもピアノなどの楽器演奏が楽しめる防音マンションや愛車と暮らすガレージハウスなどコンセプト型も新たな潮流となりつつある。

 採用されたワンダーデバイスは、ガルバリウム鋼板による外観と、柔らかな表情を見せる木の正面デザインとのコントラストが映える都市型ログハウスだ。室内はもちろん無垢材をふんだんに使った内装で、入居する人のワクワク感を醸し出す間取りとなっている(写真(1))。

 もともと天然の無垢材を使ったログハウスには、住む人の心を解放し、人に優しくなれる〝気〟が満ちている。その人の心を自然に戻す解放感が入居者間のコミュニティー育成を助ける効果が期待される。BESSの家の特徴はデッキを通じて〝外とつながる暮らし〟ができることだが、賃貸でもそのデッキや2階のベランダで外気に触れながら読書をしたり、夕焼けを眺めながらビールを飲んだりすることができる。

意匠権を取得

 ワンダーデバイスのデザインは戸建て住宅として他社がマネできない意匠権を取得しており、今回のテラスハウス型賃貸住宅にも独自の意匠権が盛り込まれるので、オーナーは他物件との差別化を図ることができる。賃貸住宅市場は今後10~30歳人口の減少(20―50年で30%減)で激しい競争が見込まれるだけに差別化は大きな武器となる。

 また、BESSのもう一つの狙いは、これまでの賃貸では難しかった「住み手が手をかけながら、自分好みの味わい(テイスト)楽しめる空間づくり」である。

 本物の無垢材を使ったBESSの家は長い年月を経るほどに「味わいが増す」という、他の素材にはない特徴がある。これまでの賃貸住宅はそういった経年変化は歓迎されず、借り主が変わる毎にクロス交換などがなされてきた。しかし、「これからのサスティナビリティの時代、賃貸住宅においても〝木の味わいを住み継ぐ〟という価値観が必要なのではないか」とBESSは考える。

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 更にこれまでの賃貸では叶えられなかった「どこでも釘が打てる」DIYが可能な壁スペースを設けることもオーナーに提案していく(写真(2))。「気に入れば、前の入居者が作ったものをそのまま残していってもらってもいい。そんな柔軟な賃貸暮らしを提供していきたい」とも話す。

 「賃貸でBESSに住む」――BESSファンの長年の夢でもあった願いが遂に実現する。