賃貸トラブルが起きると、不動産業者から連絡を受けた司法書士は、まず現状を把握することから始める。賃貸借契約書や入居申込書、添付書類の住民票や連帯保証人の印鑑証明書など、入居者のあるだけの情報を収集する。そして、それらの情報をアップデート。公的な書類ならば、少なくともその発行当時には記載の住所に登録があったということであり、そこを取っ掛かりとして最新情報を入手するのだ。
今回紹介するのは、本来では考えられない公的書類のすべてにおいて偽造が確認された例。公的な書類のほか、運転免許証のコピー、確定申告時に税務署の印鑑が押印された所得証明の控えといった、入居時に必要な書類は整っていた。住民票には当然透かしが入っている。
さっそく最新の住民票を取得してみると・・・「該当なし」。転出して5年以上経つと住民票は廃棄処分されることになっているのだが、そこまでの年月は経過していない。翌日、別の役所で戸籍の附票を請求してみると・・・結果は同じく「該当なし」。
しかし、日本の戸籍制度や住民登録制度は、情報が途切れることなく、一定の期間内では必ず繋がりをたどることができる。その中で突きつけられた「該当なし」。請求用紙の記載ミスでない限り、契約当時の書類が偽造である可能性が高まるのだ。
そして、この入居者の確定申告を担当したとされる税理士の先生の証言により、これら入居時の書類を偽造と確信することに。提出されていた所得証明として確定申告書の控えに記載されている税理士事務所に連絡を取ってみたところ、事務所自体は存在するものの、税理士先生の姓のみ正しく、名は違っているとのこと。さらに、この税務申告をした覚えもないし、このエリアでこのフルネームでの税理士登録者がいないという事実も発覚。
士業は親子で営んでいる事務所が少なくないだけに、同じ事務所内に同じ姓の関係者が数名いても業界的には不自然なことではない。おそらく偽造者たちは、事務所のホームページから一般的な姓の税理士を選び、偽造書類にファーストネーム部分を変えて記載したと思われる。
今回偽造された住民票は、透かしがあり、色の濃淡も手触りも、本物とじっくりつけ合わせても若干の違いを“感じる”程度の出来栄えだったそうで、日常的に公的書類と向き合っている司法書士でさえ、偽造とは信じがたいほどの代物だったという。
ここ数年、偽造書類が増えているそうだが、そのすべてにおいて、振り込め詐欺といった犯罪が見え隠れしているとか。家主側も不動産業者も、関わる物件が犯罪者に狙われないような工夫と、不動産に関わる身として“疑う”という眼を養っていく必要がありそうだ。
(参照:健美家不動産投資ニュース)
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