東日本大震災発生から3週間過ぎたが、人々の生活は思うように回復していない。余波は日本全国に及んでおり、桜の美しい時季にもかかわらず、花見まつりを自粛するところが多くなっている。有名な大阪造幣局の『通りぬけ』もライトアップを止め、午後5時までとなった。
▼「今ごろ、花見じゃない」「太平洋戦争の時も皆こらえた。その姿は美しかった」と、国民に自粛を求める声もある。しかし、行き過ぎた自粛は、国民の心を萎縮させ、経済を縮小させる。肝心の国民経済が弱くては、被災者への手当てが十分でなくなる。ぜひ、「自粛」を自粛してほしい。
▼そんな中、暗い気分を振り払う、うれしいニュースがスポーツ界から届いた。3月26日、世界競馬最高賞金レースであるドバイワールドカップで、史上初めて日本馬が優勝した。しかも、2着も日本馬という、いわゆるワン・ツーを決めた。恵まれない土壌に種牡馬、長く『競馬鎖国』してきた日本で、信じられない快挙だ。
▼サンデーサイレンスという世界的種牡馬の登場と若手調教師の訓練変革、設備の充実など、快挙の要因は幾つか挙げられるが、最大は、夢物語と嘲笑されようが、誠心誠意取り組み、勝利を現実のものにした関係者の努力だ。「自分にも、今できることがある」そう勇気づけられる偉業だった。もちろん、自粛していては到達できない高みだった。