若い世代の晩婚・非婚化で単身世帯が増加し、近年はそうした単身者による分譲マンション購入が増えている(本紙7月9日号1面参照)。その購入動機についてマンション販売の担当者は、「家賃を払い続けることへの抵抗感が大きい」と話す。金利が依然として低い水準にあるため、専有面積30m2台の1LDKならば、家賃並みのローン返済額で買えることも購入を強く後押ししている。
ただ、住宅ローンの税額控除が使えるのは原則50m2以上が対象なので、30m2台のマンションは対象外となる(24年度の税制改正で所得額など一定の条件を備えた場合40m2以上なら可)。また、そもそも単身世帯のコンパクトマンション購入に対する住宅ローンに消極的な金融機関も多い。
今後はこうした状況を改善し、単身者のマンション購入を金融面から後押しすることが求められる。なぜなら単身者の多くは賃貸住宅に住んでいるが、「分譲マンションに比べて居住環境が劣るので、賃貸を脱出して快適な住まいで暮らしたい」という気持ちは単身者もファミリー世帯も同じだからだ。「単身の間はアパート暮らしが当たり前」という考えがあるならば、それはかつての〝住宅双六〟時代の感覚が残っているからだろう。
従来から狭いマンションがローン控除の対象になっていないのは、「投資用」は対象にできないという理由からだが、15~20m2台のワンルームは別にしても、近年急速に広がり始めた30m2台のマンションのほとんどは単身者向けの実需市場となっている。居住環境を改善し、誰もが豊かで快適な住生活が送れるように支援することが住宅政策の使命ではないか。
日本は今、単身世帯が全世帯の38%を占め、50年には44%にも達するとみられている。住宅政策が今後単身世帯に軸足を移したとしても不自然ではなく、住宅購入を強力に後押しするローン控除対象から単身世帯が住む狭いタイプの住宅を排除する必要性はないと考えられる。
「少子化対策として子育て世帯を応援している現在の住宅政策と矛盾する」との声も聞かれるようだが、単身世帯の居住環境改善を支援することが生涯単身を促進することにはならない。むしろ、居住環境が改善されることは自宅に友人を招いたり、自分の料理の腕を上げるなど人生を前向きに生きることにつながり、新たな出会いを生む可能性も高まる。また、住生活基本計画は豊かな住生活の実現のため単身者の都市型誘導居住面積水準を40m2としているが、暮らしの豊かさという「質」が、面積という「量」で決まるとも思えない。現に居住面積については〝多様なライフスタイルを想定〟とある。単身者向けコンパクトマンションもローン控除の対象にすべきとの改正要望について、各業界団体が早急に検討課題とすることを期待する。