総務省調査によれば、今から四半世紀後の2050年には日本の人口が約1億人となる。そしてその半数が20~64歳の現役世代。残る半分は0~19歳(1000万人)と65歳以上の高齢者(4000万人)となる。つまり、現役世代1人が非現役世代1人を支える時代がやってくる。当然、所得に占める「税+社会保険料」の比率(国民負担率)が増える。さらに、内閣府調査では認知症患者が50年には1000万人に達する見込みだというから、高齢者人口に対する比率は25%で4人に1人が認知症ということになる。
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国民負担率が増えるうえに、親の介護というリスクが高まる世相の中で国民の住宅取得意欲が減退してゆくようであれば不動産業界にとってはかなりの痛手となる。しかも人口と世帯数の減少で新設住宅着工戸数が15年後の40年度には58万戸(23年度80万戸)まで減少すると見られている(野村総研調査)。
ということでこれからは新築ではなく、価格や立地など選択肢が多い既存住宅市場が主流になっていくことはほぼ間違いないと思われる。ただ、課題はある。新築と違って瑕疵などの不安がある既存住宅をどうすれば安心して購入することができるかだ。
「大手なら何か問題が起きてもきちんと対応してくれるだろうから安心」というのが大手に仲介を依頼する人たちの大方の心理である。しかし、問題が起きなければ(起きても何とかしてくれるなら)それでいいということではない。大切なことは住宅購入前に思い描いていた暮らしが実際に叶えられているかということだ。
そのように夢を叶える「いい取引」を実現させる手段として「エージェント制」を打ち出し急成長しているのがTERASS(テラス)である。
〝いい取引は、いいエージェントから〟をキャッチフレーズにしているテラスの江口亮介代表取締役は「不動産業界に限らず、これからの若い人たちの働き方は大企業のサラリーマンになるか、個人で働くかの二極化が進むのではないか」と見る。同氏をゲストに招いて「不動産業界の働き方を仕組みで考える」と題した第2回未来講座(パネルディスカッション)が12月19日、東京・新宿のNSビルで開かれた。主催したのは不動産流通プロフェッショナル協会(真鍋茂彦代表)である。
労働時間
討論会は江口氏による自社のエージェント制の紹介から始まった。テラスで働くエージェント(現在約700人)には大手からの脱却組や家庭の主婦など様々だが、個々の能力はかなり高いという。毎月300名ほどの応募があるが採用しているのはわずか2%程度だ。仕事の多くをリモートでこなす人が多く、成約までに要する時間は業界平均よりもかなり短いという。江口氏は「時間に余裕を持つことは〝いい取引〟を実現するためにかなり重要な要素だ」と指摘する。
セゾンリアルティ代表取締役会長の竹井英久氏はこう指摘した。「日本の宅建士はテストには合格しているが、重要事項を説明する資格があるというだけで何の専門家なのかがはっきりしない。セールスの資格者ではないところが大問題。クライアントからすればどういう営業実績があって、どんな分野が得意なのかを知りたいはず。そういう情報を客観的に提供する仕組みが必要だ」。
アートアベニュー取締役の藤澤雅義氏は「大手かエージェントかは情報リテラシーの問題。今の若い人はその点全く問題ない。それと、これからの組織にはリモートによる合理化、効率化が不可欠」と指摘した。MCを務めたK―コンサルティング代表取締役の大澤健司氏は「エージェントはクライアントの未来のことまで考えて提案する力が問われている。そして〝この人が言うことなら―〟と信じてもらえる人間力を磨くことが大切だ」と語った。