政府は、区分所有法制の見直しに関するとりまとめを22年度のできるだけ早期に行う方針だ。老朽化マンションの再生円滑化等に向けた様々な方策について、国土交通省、法務省が連携を強化し、一つのパッケージとして対応していく。3月9日に開かれた規制改革推進会議スタートアップ・イノベーションワーキング・グループの中で、とりまとめ時期の目安が初めて示された。
同法見直しの背景には、老朽化したマンションの急増がある。築40年超の分譲マンションは103万戸(20年末時点)であり、10年後には約2.2倍の232万戸、20年後には約3.9倍の405万戸となる見込みだ。加えて、所有等不明区分所有者の存在や区分所有者の管理意識の低下に伴い、管理等の意思決定に必要な賛成が得られず、区分所有建物の管理不全化や老朽化した建物の建替え等が困難になるなどの懸念がある。また、被災により損傷した区分所有建物の建替えについては、被災区分所有法に基づく災害指定政令の施行後1年以内とする決議期間が短すぎるとの指摘もあり、これらを踏まえ、区分所有建物の管理や建替え等を円滑化する方策を総合的に検討する。
政府は、規制改革実施計画(20年7月閣議決定)の中で建替え決議のあり方や幅広い関係者を含めた検討の場の設置等を示すと共に、所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針(21年6月関係閣僚会議決定)の中で不明土地と共通の課題がある点などに配慮した検討の必要性を示唆してきた。法律研究者や都市計画研究者、マンション建替え・管理に関する事業者団体等から構成される区分所有法制研究会には、21年3月に法務省および国交省が参加。同研究会では実務に携わる15の事業者・地方公共団体・研究者等から実情を調査し、同9月から論点整理を開始した。
(1)建替え・区分所有関係の解消の円滑化、(2)区分所有建物の管理・被災区分所有建物の再建等の円滑化を柱とした主な論点は、「建替え決議の多数決要件の引き下げの是非とその方法」「団地内建物の建替え等を円滑化するための仕組み」など。例えば、建替え決議については、多数決要件(5分の4)を単純に引き下げる案のほか、多数決要件を合意によって緩和することを認める案などが検討事項とされ、少数者の権利保護や共用部分・規約の変更(4分の3)との関係の整理なども課題に挙げられている。
これらを踏まえ、同ワーキンググループでは、区分所有建物の管理や建替え等を円滑化する総合的な方策の提示に向けて、関係省庁の更なる連携の強化を確認。改正法案など必要な措置の実行に向けて、検討を加速化していく。