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大手デベ、オフィス街に新たな価値 アートのまちづくり推進 ビジネスに刺激、街の活性化も

 大手ディベロッパー各社が重点エリアのまちづくりにアートを積極的に取り入れている。アートがビジネスと融和し新たな価値を生み出すことを期待。重点エリアの来街者に対して、特徴あるコンテンツの提供によって、リアルの場を持つ強みが生かせるとの判断もある。

東京・有楽町を〝アーティストのいる街〟に

 三菱地所は3月11日から14日までの期間、東京・有楽町のアートによるまちづくり事業「YAU(有楽町アートアーバニズム)」の一環として、アーティストの制作現場を舞台に現代アートを鑑賞・体感できるイベント「YAU OPEN STUDIO」を開催。それに先立ち同月10日、同社の〝アートアーバニズム〟の取り組みについての報道向け説明会を開いた。

 同社は以前から、東京の大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアで、まちづくりにアートを取り入れる試みを進めてきた。〝アート〟と〝アーバニズム〟(まちづくり、都市計画)からなる造語を用いた「YAU」は、その具体的な実践として位置付けられるもので、2月1日から有楽町ビルおよび国際ビルを主な拠点として5月31日まで開かれているプロジェクトだ。今回のようにアートの制作現場・過程を公開して交流を促すほか、若手アーティストの相談所、同エリアのオフィスワーカーが街とアートについて学ぶスクールの運営を活動の柱としている。今回の「YAU」は5月末に成果をまとめ、発表する予定だ。

 新有楽町ビルの空き区画を活用したアート制作・コミュニティ構築プロジェクト「ソノ アイダ#新有楽町」や、3月4日から21日まで開かれる丸の内仲通り沿い店舗とアーティストとのコラボレーション企画「有楽町ウインドウギャラリー」など複数の企画を実施、連動させている。

 一連の取り組みについて、同社の茅野静仁執行役員は10日の説明会で、「コロナ禍により重要性を痛感した〝リアルの価値〟を具体化するための手掛かりの一つであり、ビジネスとアートとの化学反応で生みだすムーブメントと捉えている」と説明。アーティストによる活動のみに焦点を当てるのではなく、そこにビジネス関係者を呼び込み、互いの接点を生み出すことに主眼を置く意図を強調した。

 その手段として、エリアマネジメントの手法で地域のリソースを有効活用しながら、〝アーティストがいる街〟づくりを進める。アーティストとオフィスワーカーをつなげ、交流と刺激による新たなビジネスの創造と同エリアの価値向上を目指す。関連して、組織的にアーティストの活動を支える体制づくりにも力を入れる。

80周年事業の一つとしてデジタルアート推進

 三井不動産は、80周年事業として「未来特区プロジェクト―クリエーター特区―」を展開。5月に東京・日本橋においてリアルとデジタル、リアル空間にデジタルアートを重ねるデジタルオンリアルでのアート鑑賞を実施する。コロナ禍による急速なデジタルシフトが起きる中、デジタルアートやNFT(非代替性トークン)のブームなど、新たな産業・市場を生み出している領域と認識。更に、5Gなどの普及で、新たな産業・パートナーが生まれる可能性が高く、リアルの場所や都市との事業の親和性も高いAR・XR技術を活用したコンテンツに着目している。

 アートに関して三井不動産は、「まちづくりとアートの親和性は高く、来街者に対して当社ならではのユニークなコンテンツを提供できる」とし、「特に我々はリアルの場を持っている、という強みがあるので、この点を大いに生かしていきたいと思っている」という。

 東京建物は、東京・京橋に昨年「ブリリアアートギャラリー」を開設した。近隣のギャラリーを巡っているアート好きな人が、土日・平日夕方を中心に月700人ほどが来場。同社の住宅「Brillia Tower池袋West」とコラボレーションしているアートインテリアも展覧会で展示しており、顧客もBrilliaとアートについて評価しているという。更に、同社の社員も多く来場し、アートによって社員の考える力が養われる効果も今後期待しているという。