売買契約日は契約を祝うセレモニー(儀式)の日とする。
ベテランの営業担当者ほど売買契約日は何事もトラブルなくスムーズに進み、売主と買主と「契約ができて良かったですね」と契約を祝う場にしている。その反対はいろいろ質問や議論があり「こんな内容なら契約はしたくなかった」と契約が頓挫する場になること。同様に当日のドタキャンで相手に謝罪する流れも避けたい。そうならないように売買契約日の前日か2日前には売主や買主へ電話もしくは直接出向いて様々な確認を取っていることが多い。
確認内容は、(1)売買契約の意思確認、(2)売買契約条件や不動産の細かな説明、(3)持参する書類等の確認、主にこの3点を行う。これらの確認ができれば売買契約の場は「事前に言われていたことの再確認の場」となり平穏に進み、無事売買契約の締結となる。これを目指していきたい。
まず(1)売買契約の意思確認。買主や売主に「このまま売買契約に進めてよろしいですよね」と聞く。何も問題がなければ「進めてください」と言うし、1度そう口に出せば相手への迷惑を含み心理的ハードルが出てくるので、直前のキャンセルはほぼなくなる。一方で問題があるなら「実は……」と不安を吐露してくれる。それならそうと、その不安を払拭したほうがよい。新人の頃は「やはり契約したくないです」と言われるのを恐れてなかなか意思確認をしなかったが、結局尋ねなくとも、契約が直前に流れるだけなので尋ねたほうがマシと言える。
(2)売買契約条件や不動産の細かな説明は重要事項説明書、売買契約書の各素案、状況等報告書、設備表を持って直接会って説明をしておきたい。買主は契約の場になって「実はこんな事実があります」と言われないかと口には出さないが不安に感じている。
そのため書面での説明により「思ったとおりの不動産と契約条件でした」と事前に安心させておくのは有効だ。できれば売買契約日の2日前(以上)にしておきたい。前日だと修正箇所が生じたら対応する時間がないかもしれないからだ。
最後に事前に案内をしていた(3)契約の場に持参する書類等の確認をして終わりとなる。収入印紙は行きがけにコンビニで買っていけば良いと軽く考えている方がいるので、「高額の収入印紙はコンビニに置いていないことが多いので郵便局で買っておいてください」と案内しておこう。ここまでやるの? と思われる方がいるかもしれないが、売主と買主から「そんなこと分かっていますよ」「しつこくて迷惑」と怒られることはまずない。本心でなくとも「丁寧に説明してもらったので安心でした」と言う好評の方が多い。それなら最終確認をしたほうが、よりベターと言えるだろう。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。