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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇128 「女性塾」沖縄へ 圧倒的ポテンシャル 豊かな〝発想力〟あればこそ

 虐げられてきた苦難をバネに豊かな発想力が生まれ、それが沖縄の高いポテンシャルを支えている――そんな気付きを得たことが今回の視察研修最大の成果だったのではないか。

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 一般社団法人「不動産女性塾」(北澤艶子塾長)は5月21日から23日までの3日間、沖縄の視察研修を実施した。 沖縄メンバーの協力のもと、沖縄で最も有名な女性経営者といわれる沖縄経済同友会代表幹事の渕辺美紀氏による講演、世界論文ランキング9位(東京大学40位)の沖縄科学技術大学院大学(OIST)訪問、現在埋め立て工事が進められている沖縄市東部海浜開発事業視察などが組まれ、幅広い見地から不動産を考える機会となった。

 今回の研修では沖縄の特異な歴史や文化について学んだが、開発ポテンシャルの高さはそうした独特の文化が育てた豊かな発想力に支えられているという感覚をつかむことができたのだと思う。

 「沖縄の今、そして未来」と題した渕辺氏の講演がそれを示唆していた。ホテル、飲食、貿易など幅広い事業を手掛ける(株)JCC会長でもある渕辺氏は講演で沖縄のポテンシャルが高い理由として(1)成長著しい東・東南アジアに近い地理的優位性(2)人を惹きつける豊かで美しい自然環境(3)OISTの存在(4)日本一の出生率(1.70、全国は1.26)などを挙げた。

 中でも女性塾一行が圧倒されたのはOIST(オイスト)の雄大な敷地とその美しい景観、そして温暖化など世界的課題を科学技術で解決するという崇高なミッションだ。

 同大学は全国的知名度はまだ高くないが世界トップレベルの頭脳を結集させるにふさわしい研究施設と環境を備えている。ノーベル生理学医学賞を受賞した2人の学者を含め約90人いる教員の6割、学生(博士課程)約250人の8割が外国人だ。私立大学だが内閣府から毎年250億円の資金が供給されているというから、学生一人当たり1億円となる。観光と基地しかなかった沖縄を発展させるためには3つ目のKとして「教育」を誘致すべきと考えたのが設立構想の始まりだった。

世界の富裕層呼ぶ

 もう一つの視察先となったのが、沖縄市東部の海浜に95ヘクタールの人工島を建設するリゾート開発。県内最大級となる900mのロングビーチや世界の超富裕層が所有するスーパーヨットやクルーザーを受け入れるマリーナ、複合商業施設、宿泊施設などの整備が予定されている。ちなみに、スーパーヨットは30日の滞在で4500万円の消費が見込まれるという。

 そうした経済効果もさることながら、今回の視察研修で女性塾が学んだことは、これからの事業にはグローバルな視点が重要になるということではないか。沖縄(琉球王国)は江戸時代には薩摩藩による侵攻、戦後はアメリカによる統治、復帰後も基地問題は残されたまま(復帰後の歩みに不満を抱く県民が55%)という苦難の歴史をバネにグローバルな視点を育ててきた。

 ということであれば未だに国民から高い信頼を得られない不動産業界もそうした負のイメージをバネにそろそろ新たな発想力を持つべきときだと思う。それでなくてもこれからの不動産業は人口減少、超高齢化、単身世帯の増加など閉塞感が深まっていく。

 不動産業は内需の柱、国民生活の基盤と言われながらも国民の信頼感が薄いため、前向きで明るいイメージが定着していない。不動産女性塾は北澤艶子塾長の「不動産業界のイメージを女性の力で明るく、華やかにしたい」という願いから8年前に発足した。

 では、女性の力とはなにか。ここではそれを日本の女性のポテンシャルの高さと捉えたい。

 昔と違い、女性が結婚後も働くのが当たり前になり、経済的には男性に頼らなくてもいい時代になった。その象徴が「女性塾」でもあるのだが、そこにグローバルという視点が加われば不動産業の垣根を払い、日本の社会課題解決に貢献する道が見えてくる。