住宅・不動産各社の24年度中間期決算が出そろい、大手・中堅共におおむね好調な数字が並んだ。詳細は本紙11月19日号1面をご覧いただきたいが、オフィス需要の堅調な推移によるビル賃貸事業の好調が、大手を中心に好業績をけん引した。懸念材料はあれど、まずは業界の明るいニュースと言えそうだ。
▼オフィス事業の好調の背景には、コロナ禍からの回復に伴い、テナント企業の事業環境と雇用が回復したほか、リモートワークから出社中心へ回帰する動きの影響も想定される。総務省の24年版「情報通信白書」によると、国内のリモートワーク導入率は、21年をピークに減少の一途。その事実に対する賛否はあるものの、オフィス事業にとっては追い風となった。更に、人材への投資の一環として、ワークプレイスの充実化を図る動きも業績を押し上げたようだ。
▼不動産業界の各社はこうした背景を踏まえ、伸長した利益を何に投じるのか。テナント企業と同じく「人的資本」に投資するのか、新規事業の開拓か、長期的な視野に基づく市街地再開発や海外事業展開か。あるいは株主還元か、内部留保の充実化か。「真に理財に長ずる人は、よく集むると同時によく散ずるようでなくてはならぬ(金銭はうまく集めると同時に、社会を活発にし、経済界の進歩を促す上手な使い方をしなければならない)」とは、今年おカネの〝顔〟となった渋沢栄一の言葉である。