総合 売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(73) ~畑中学 取引実践ポイント~ 売主・買主の合意と後日変更に対応「売買契約書の訂正方法」

 売買契約書や重要事項説明書に誤字脱字があった場合は(1)作成し直す、(2)訂正する、この2つが対応方法となる。売買契約の前日など時間に余裕がある場合は当然作成し直しとなるが、売買契約中でも売買価格の数字の間違えなど売買の意思決定に重要な個所の誤字脱字はできるだけ作成し直しが望ましい。理由は後日の争いの種になるからだ。売買価格なら「契約日になって急に価格を変更されて無理やり署名押印をされた」などと言われることである。その余地を残さない方が取引上は良いだろう。それ以外はその場で訂正することになる。

 訂正は4段階の作業を行う。まず、(1)間違った文字を潰さないように二重線(二本の線)を引く。(2)続いてその上に正しい文字を書き入れる。(3)訂正箇所の余白に削除した文字数と書き入れた文字数を数えて「●字削除、●字加入」と書く。(4)訂正した箇所と、●字削除●字加入の箇所の2箇所に、売主、買主の押印を行う。原則はこの通りとなる。

 補足事項としては、(1)二重線として修正液やテープで消すことはしない、また紙を貼って書き直すのもしないこと。理由は何を間違えたのか分かりづらくなるのと、それを削除することに売買当事者の合意が取れたのか分からなくなるからだ。(3)●字削除●字加入は訂正箇所近くの記載が好ましいが、押印等のスペースがない場合は同じページ内ならOKだと思う。その場合は「●行目●字削除●加入」と該当行数も付け加えた方が丁寧かもしれない。ちなみに原本全てに記載するので原本2通なら2通とも記載する。

 なお、●には数字が入るが旧字を使うことが多い。旧字は戦前頃までに利用された漢字で「壱(いち)、弐(に)、参(さん)~拾(じゅう)」で画数が多く後で書き加える(変更する)ことがしづらい漢字だ。新字の一なら二、三と後で書き加えて数字を変更し易いが、旧字なら壱、弐、参なので変更しにくい。トラブル防止のためそうする。ただ、旧字を利用する決まりはない。そのため、変更しづらい数字「四、六~」などでも構わないし、「1、2、3~」と算用数字でも構わないだろう。会社の方針もあるだろうからそれとの兼ね合いで決めていこう。

 (4)押印は契約書等に使用した印鑑で行う。ご年配の方などは「訂正印用の印鑑で押した方が良いですか」と確認してくることがあるが迷わないようにする。別の印鑑だと売主、買主が本当に確認をしたのか、後日第三者が押したかもしれないと分からなくなるのがその理由だ。

 文字を書き忘れた場合は該当箇所に文字を書いて「●字挿入(加入)」と書くこともある。

 様々なケースがあるが、基本は売主と買主の合意を取ること、後日変更しづらい対応すること、この2点を守っていけば大過はないだろう。

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【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ 1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。