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三井不×東北大「サイエンスパーク構想」で新会員組織100社へ

 三井不動産と東北大学は4月26日、社会課題解決と新産業創造を目指す共創の場として「東北大学サイエンスパーク構想」を本格始動すると発表した。同大学が強みとする「半導体・量子」「グリーン・宇宙」「ライフサイエンス」「材料科学」の4つの領域で活動を開始してコミュニティを拡大しながら業界や領域の垣根を超えた交流・連携を加速させるための会員組織を新設する。大学と企業間とのネットワーキング構築にとどまらず、イノベーションを生み出す。同構想の愛称を「MICHINOOK(ミチノーク)」とし、新設する会員組織を「MICHINOOKコミュニティ」に決めた。法人を対象とする特別会員(有料)は向こう5年で100社、個人会員(無料)は5年後に5000人をめざす。

 同構想では、次世代放射光施設「ナノラス」や半導体プロセスラインなど世界トップレベルの研究開発施設の集積が進む青葉山新キャンパスで、東北大学がおよそ4万平方メートルの「サイエンスパーク」を整備中だが、その初弾として2024年4月1日から新たな研究棟2棟の運用を開始した。

 三井不と東北大が同日、都内で会見を開いた。植田俊・三井不動産社長は、「場を提供することで、そこに人が集まり、そこからコミュニティを形成する方法は我々の勝ちパターンだが、今回はやや様相が違い、東北大学というアカデミアとイノベーションを創出する取り組みが特徴だ」と話した。同社では、宇宙関連のプレーヤーが中心となって設立した宇宙ビジネス共創プラットフォームを22年9月に設立しているが、「今回は半導体・量子など複数の領域を対象としたコミュニティを形成する。ゼロベースではなく既に存在するコミュニティを東北大という場をベースに一緒に発展させていく」とした。

 目標会員の獲得について、同社イノベーション推進本部産学連携推進部長の湯川俊一氏は、「各研究分野において、どのような企業と研究を進めていくべきかなどの目論見みたいなものがある。その対象となる企業が当社のオフィスビルのテナントであれば、そこに声をかけることもある。テナントだからと集中的に営業をかけることではないが、対象となる企業が相当数テナントになっているところもある。結果的にそうした企業にフォーカスすることは予想されている」と述べた。

 さまざまなアンケートも実施しており、その中で「東北大と一緒に研究進めたい」「ナノテラスを使ってみたい」などの反応が見られる企業を中心にアプローチする。課題とする海外企業へのアプローチでは、東北大が持っている海外との連携大学のネットワークや同社が欧米の主要都市に構える拠点網から対象企業を洗い出すとする。

※写真は、国立大学法人東北大学総長の冨永悌二氏(写真㊧)と三井不動産代表取締役社長の植田俊氏