政策

社説 伸び悩む日本の余暇市場 有望な成長産業とするには

 余暇とはオンタイムに対するオフタイムのこと。過ごし方は人それぞれで、計画的な旅行やスポーツレジャーもあれば、空き時間を利用する娯楽や趣味もある。いずれもオンタイムの英気を養う表裏の関係にあり、余暇産業の振興は我が国の経済成長とも直結する。訪日外国人観光客が15年に約2000万人まで増えたことで、目標は「20年に4000万人」に引き上げられ、レジャー・観光産業は一躍注目されるようになった。

 余暇活動は幅広く、スポーツ、趣味・創作、娯楽、観光・行楽などの部門に分類されるが、いずれも日本人の暮らし、ライフスタイルと密接な関係にある。住宅や街づくり、リゾートや大型商業施設、ホテル開発や運営を手掛ける不動産会社はもちろん、地域に根付いてまちおこしや観光振興などに「取り組む事業者の活動も無縁ではない。レジャー・観光産業を成長産業に導くためにも、その動向を注視していく必要がある。

レジャー白書が示すもの

 日本生産性本部余暇創研はこのほど「レジャー白書2016」をまとめた。15年の日本人の余暇活動を分析したもので、参加人口や市場規模は全体的には減少傾向で、家計の厳しさ、個人消費の伸び悩みなど、日本経済の〝縮図〟のような結果となった。

 余暇市場の規模は72兆2900億円と前年比1.0%減少した。スポーツ、観光・行楽は伸びたものの、趣味・創作、娯楽(同1.5%減)が低迷。とりわけ娯楽部門が足を引っ張った格好だが、一方で経済情勢やIT化の進展で余暇活動の主役は刻々と変化することも分かった。振り返ると、余暇市場は96年の約91兆円をピークに減少し、02年から再び増勢に転じて05年に85兆円台に戻したものの再び減少。11年からは72兆円台を維持するのがやっとで、反転増勢への道筋は見えないままだ。

現状がよく見えるとき

 レジャー・観光産業の将来を考えるとき、観光資源や宿泊施設の確保のほか、内外の顧客を満足させる受け入れ態勢をどう整えるのかが課題である。旅行者が偏る祝祭日の存り方や航空機・新幹線などの交通料金体系を含め、改めて点検してみる必要があるだろう。

 折から夏休み、お盆休みシーズンである。繁忙期に入った各地のレジャー・観光関連産業の現状や課題がよく見える時期である。顧客として現状を冷静に評価してもらうな一方で、受け入れるレジャー・観光産業側も前向きに、自らの施設・サービスの水準などを点検、評価する機会としてみてはいかがだろうか。その結果への真摯な対応こそ、産業としての競争力を高めていく近道となるはずだ。