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社説 迫られるJリート再編 資本コストを意識した経営を

 Jリートが新NISAの対象商品になっていることで不動産証券化協会では個人資金の流入に期待する。個人マネーを取り込もうと投資法人各社も投資口(株式)を分割し、単位当たりの投資額を引き下げて投資のハードルを下げる動きが活発だ。そのJリート市場に再編の波が押し寄せている。東証リート指数は1700ポイント前後に沈み込んで、株価水準の観点から言えばリーマン・ショックとコロナ禍を除き歴史的な割安圏をさまよう。利上げ局面では分が悪く、反転攻勢が見通しづらい中で、再編の足音が実際に聞こえ始めた。シンガポールを拠点とする投資ファンドが2月にNTT都市開発リートと阪急阪神リートに対してTOB(株式公開買い付け)を仕掛けた。両リートにとって〝寝耳に水の出来事〟で、敵対的TOBである。Jリート各社の投資口価格(株価)が割安といっても、運用する不動産の収益性は高い。上場リートを買収することで優良物件を割安に手に入れようと考える投資家が出て来ても不思議ではない。

 Jリートは利益の9割以上を分配金に回すことで法人税が掛からない仕組みだが、株式保有比率が上位3株主で50%以上を占めると導管性要件に抵触し、同族会社としての認定をされて法人税がかかるようになる。ざっくり言えば4割課税され、その分の分配金も減って株価が急落する。リーマン・ショック前の東証リート指数が2500ポイント台と高水準で推移していた頃、そんな荒療治を試すヘッジファンドも登場した。

 足元は歴史的に割安な状況であるためTOBによる買収劇を歓迎する声も少なくない。Jリート市場が活性化するとの見方からだが、一方で敵対的TOBは現実的ではないとの見方も多い。とはいえ、Jリート各社は、敵対的TOBが示唆するところを理解するべきだ。端的に言えば、資本コストと株価を意識した経営を促されていることに自覚を持つ必要がある。特に外資勢は、リーシング力がなければ鑑定価格以上で物件を売却して価値を生み出すことや、物件売却も自社株買いもしないのであれば買収されることで価値を生み出すことを迫っている。

 実現の可能性から言えば、強いリートが弱いリートを吸収するパターンだ。メインシナリオとしてはリート同士の合併。単純な合併というよりも、どこかの銘柄が「吸収合併しますよ、合併比率は何対何です」と言った後に他リートが「我々と合併したほうがより有利ですよ」と手を上げて再編劇に乗っかって来るようなパターンも考えられる。

 敵対的TOBに狙われないためには、株価を上げて一般株式のPBR(株価純資産倍率)に相当するNAV倍率を1倍割れから抜け出すことが買収防衛策になろう。その株価を上げるには、賃料を上げて分配金を増やしたり、鑑定価格以上の売却で物件の価値を上げていくことが重要になる。