顧客への必要書類の案内は「見て・そろえたか」の確認が不可欠だと思う。案内はするが、その確認をしない人もいる。トラブルを避けるためには確認までを必要書類の案内の一連の所作と考えた方が良いだろう。
先日、筆者が融資実行と引き渡しの手続きを銀行でしていた時に、筆者とは関係ない別のブースから顧客が何か書類を忘れたらしく「そんな重要な書類なら、昨日にでも必ず忘れないでください、と連絡をくれても良かったじゃないですか」と不動産会社の担当者に八つ当たりしている声が聞こえた。経緯はどうであれ、顧客が必要書類を忘れると手続きがストップし何かと大変となる。銀行や司法書士にも迷惑だ。
また、そのように責任を押し付けられてもつまらない。必要書類の案内を見て書類をそろえなかった人が悪い、と顧客に言っても意味がないし、そもそも言えない。顧客から見て高い仲介手数料(報酬)を支払うのだから、「不動産会社はトラブルなく手続きを進めて当然」となり、自分が忘れたとしても、忘れないように注意喚起するのが不動産会社として当然の仕事だ、と責任は不動産会社のほうが顧客より大きくなるからだ。
そのため、「お送りした必要書類の案内はご覧いただきましたか?」と事前に確認をしておき、必要であれば「一緒に確認しましょうか?」と、必要書類を撮影した写メを送ってもらい一緒に確認するぐらいが当然と言える。また、必要書類の用意の見落としも防げるのでその方が一石二鳥だろう。
「お客さんに案内を見ましたか? と聞くとうるさがられないか」、「手間暇がかかって面倒くさい」このように思わず、しっかり電話連絡をして確認をしておこう。メールやSNSで確認の連絡をするなら必ず文末には「お手数ですが確認されたらご返信をお願いします」と入れておこう。その上で顧客から直前になっても「用意しました」と返信がないのなら、メールやSNSを見ていない可能性も考慮し電話で連絡をして「用意できましたか」と確認しておきたい。
なお、必要書類の案内は印刷して書類として顧客宅に郵送が望ましい。顧客に手続きに必要なこととその重要性を認識してもらいやすいし、手元に置きながら必要書類の確認が取れるからだ。また、メールやSNSだけだと他のものと紛れてしまうこともあるし、顧客が「これはそろえた」「そろえていない」というチェックが印刷したものと比べてしにくい。書類という物としての存在感が有効に機能するのが、必要書類の案内だろう。
ただ、速報性はメールやSNSでの連絡の方が上。そのため、メールやSNSでご案内の上、書類として郵送する、そこまですれば十分と言えるだろう。
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【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ 1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。