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記者が解説 住宅新報web週刊ニュース記事(8月26日~9月1日)

Pick Up!

  • 不動産価格上昇受け購入検討者の8割が「売り時」感じ、過半数は買いに消極的
  • 7割が大地震にあう可能性懸念も自宅の耐震性は不足が6割
  • 「トウキョウトーチ」で食品廃棄物を循環活用、三菱地所の取り組み第6弾

 1週間のランキング・トップ10から記者が気になる記事を3つピックアップしていきます。

 初めに、今回のランキング首位となった「顧客の8割が『売り時感』実感 野村不ソリュ調べ(2025/8/28配信)」です。野村不動産ソリューションズが年2回実施、公表している「住宅購入に関する意識調査」結果をご紹介した記事で、不動産購入検討者のマインドを把握するために有益なデータとして、多くの読者の関心を集めた様子です。同調査によると、現在が不動産の「売り時」と感じている人は、前回調査からはわずかに減少したものの、依然として8割近い水準で高止まりしています。一方、「買い時」と感じる人の割合は減少が続き、「買い時だと思わない」人の割合が上昇して今回5割を超えるなど、顧客が不動産購入に消極的な様子も明らかです。背景にあるのは、やはり不動産価格の高騰の模様。それを現場で実感している事業者が、不動産取引への意欲低迷や需給バランスの悪化による売買市場の停滞・縮小を懸念し、購入検討者の動向を注視している様子がうかがえる結果でした。

 次は、こちらも調査データの記事で、3位にランクインした「5年以内に大地震の可能性7割超が実感 一条工務店調べ(2025/8/29配信)」。9月1日の「防災の日」を前に実施した意識調査です。阪神・淡路大震災から30年という節目に、防災意識の変化や対策の状況、リスク感覚などを幅広く調査していますが、主眼は住宅の耐震性に関連する項目でしょう。5年以内に自分自身が大きな地震に遭遇する可能性について、「とてもそう思う」「そう思う」の合計は71.8%。一方で、自宅の耐震性に関して、大地震でも安心できるかどうかの設問には、「全くそう思わない」「あまりそう思わない」の合計が62.5%と、不十分な様子が見られました。その理由として最も多かったのは、「耐震性の程度が把握できていない」です。同社の公表資料では調査サンプルの居住形態等は示されていないため一概には言えませんが、一般に住宅の耐震化の最大の障壁は費用の問題とされるものの、それ以前に耐震診断が十分に実施されていない現状を反映した結果かもしれません。また、低層アパート等の賃貸住宅の場合、居住者が建物の耐震性を把握することが難しいという事情もありそうです。いずれにしても、住まい手の地震への不安に対して、住宅の耐震性能が十分に応えられていない実態が見られました。行政による支援や誘導策にも期待したいところですが、住宅新築・改修事業者への潜在的ニーズが依然として大きいことを示す調査結果と考えられます。

 最後は、2位の「三菱地所 トウキョウトーチ街区の食品廃棄物を有効活用(2025/8/27配信)」をご紹介します。東京駅周辺で最大級の再開発「トウキョウトーチ」街区内で、他業種の企業と連携して食品廃棄物の循環・有効活用を図る取り組みです。三菱地所は以前から、オフィスビル等の〝ハコ〟開発のみならず、エリアマネジメントを始めとした地域価値の向上に力を入れていますが、今回の取り組みも同社の廃棄物再利用施策「サーキュラーシティ丸の内」の第6弾という位置付け。直接的な収益性というよりも、サステナブルな取り組みの継続により、街区全体の付加価値や企業イメージを高める目的と考えられます。また、ESG・SDGs対応による資金調達での優位性も見逃せません。同時に、こうした取り組みを将来的な収益事業に結びつけたいという狙いもあるでしょう。現状、こうした取り組みはまだ発展途上の部分がありますが、業界のリーディングカンパニーが知見を蓄積し、かつ水平展開も進んでいけば、社会的要請への対応と経済性を兼ね備えた持続的な街づくりの広がりに期待できるかも知れません。

 

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